アヤラ・コーポレーション 2025年第2四半期決算:銀行・不動産の好調で利益が17%急増
- bedandgoinc
- 2 日前
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August 20,2025

アヤラ・コーポレーションは、国内で最も歴史があり、多角的に事業を展開するコングロマリットのひとつとして、2025年第2四半期において帰属純利益が前年同期の₱92.1億から₱107.6億へと17%増加したと発表しました。今回の利益成長は、銀行および不動産部門の堅調な業績が、通信やエネルギー分野の低迷を補ったことにより、アヤラの多角的な事業ポートフォリオの強靭さを改めて示しています。
連結収益はわずかに減少したものの、アヤラはコスト管理の徹底と中核事業の成長の活用によって、より高い収益性を実現しました。
決算ハイライト:詳細分析

2025年第2四半期 帰属純利益:₱107.6億 (前年比 +17%)
四半期収益:₱905.2億 (2024年第2四半期の₱926.7億から -2.3%)
営業費用:₱680.9億 (前年比 -8.3%)
2025年上半期 純利益:₱2,336億 (前年比 +5%)
コア純利益:₱2,370億 (前年比 -2%、一時的要因を反映)
この結果から、いくつかのセクターでは収益成長が横ばいとなったものの、アヤラは費用基盤を効果的に管理し、売上高の伸びを上回るペースで利益を拡大することに成功したことが示されています。
銀行部門:アヤラの安定成長エンジンであるBPI
アヤラの中核を担う銀行部門である**フィリピン諸島銀行(BPI)**は、引き続き成長の柱となっています。2025年上半期、BPIは純利益を前年同期比8%増の₱330億と発表し、収益も14%増の₱926億に拡大しました。
この収益増は主に純金利収入の拡大によるもので、貸出活動の活発化や有利な金利環境が寄与しました。一方で、営業費用は12%増の₱427億となり、人員コストやテクノロジー関連投資の増加が要因となっています。これらの投資は短期的には負担となるものの、デジタルバンキングや金融サービス分野での長期的な競争力強化につながると期待されています。
BPIの着実な成長は、消費者向け融資、中小企業向け金融、デジタルバンキング基盤の拡大などを通じて、アヤラが銀行業界で依然として強い存在感を示していることを裏付けています。
不動産部門:アヤラランドが牽引するプレミアム市場拡大

アヤラ・ランド(ALI)は、アヤラ・グループの収益を支えるもう一つの重要な成長エンジンであり、2025年上半期には純利益を**₱142億(前年比8%増)**と報告しました。この成長は主に、不動産開発、商業リース、ホスピタリティ事業によって支えられています。
一方で、全体の収益は**₱831億と前年比1%減少しました。これは、一時的な要因であるモールの再開発プロジェクトやサービス収入の減少によるものです。しかし、ALIのプレミアム開発戦略は揺るがず**、上半期には合計**₱405億規模の新規住宅プロジェクトを5件**立ち上げ、高級不動産需要に対する確信を示しました。
中でも注目されたのは、2025年6月に発表されたアヤラランド・プレミアの「ラウリアン・レジデンシズ(マカティ)」であり、富裕層や投資家が求める一等地での高級不動産に焦点を当てるALIの姿勢を改めて強調しています。
通信部門:グローブ、利益率圧迫に直面
アヤラの通信部門であるグローブ・テレコム(Globe Telecom, Inc.)は、引き続き逆風に直面しました。純利益は₱124億と前年同期比14%減少し、その主因は減価償却費の増加、利息費用の上昇、ならびに非営業費用の増加にあります。
グローブは、関連会社からの持分利益やフィンテック子会社Myntの希薄化益といったプラス要因を得たものの、これらはコスト圧力を相殺するには不十分でした。その結果、総サービス収入は₂%減の₱802億となり、通信事業および非通信事業の両分野での収益軟化が表れています。
この低調な業績は、通信業界が直面しているインフラ投資の増大による資本支出負担や競争激化による利益率の圧迫といった構造的な課題を浮き彫りにしています。
エネルギー部門:減損と事業低迷で打撃を受けたACEN
アヤラの再生可能エネルギー事業部門であるACエナジー(ACEN)は、2025年第2四半期に業績が大きく悪化しました。純利益は₱7.63億へと88%急減し、その主因はベトナムにおける風力発電プロジェクト(Lac HoaおよびHoa Dong)の₱27億規模の減損処理によるものです。
コア純利益も**₱35億へと24%減少**し、以下の複数の要因が重なったことが背景にあります:
フィリピンおよびオーストラリアにおける太陽光照射量の低下
イロコス・ノルテの風力発電所の損傷
国内におけるスポット市場価格の低迷
新規稼働プラントに伴う減価償却費の増加.
親会社であるACエナジー&インフラストラクチャー(ACEIC)も、コア純利益が₱41億と39%減少しました。これは、ACENからの貢献度の低下に加え、火力発電事業の業績不振が影響しています。
この結果は、エネルギー事業が持つ高いボラティリティを浮き彫りにしています。特に再生可能エネルギー資産は、気象条件や市場価格の変動に敏感であるため、収益の安定性が大きく左右されることを示しています。
ポートフォリオ事業:新たな成長の光明

通信やエネルギー部門の不振にもかかわらず、アヤラのポートフォリオ事業は堅調さを示し、グループ全体の安定性を下支えしました。
ヘルスケア(AC Health):コア純損失は前年の₱32.7億から**₱10億へと大幅に縮小**。医療提供部門の好調な業績が、医薬品部門の低迷を補いました。さらに8月には、シンガポールのABC Impactが16%の株式を取得し、病院・クリニック・薬局ネットワーク拡大のための新たな資本が注入されました。
自動車(ACMobility):純利益は前年のわずか₱2.4億から**₱12.2億へと急増**。いすゞからの配当増加や、本田およびBYDからの持分利益が主な牽引役となりました。
テクノロジー(インテグレーテッド・マイクロエレクトロニクス/IMI):760万米ドルの純利益を計上し、前年の880万米ドルの純損失から黒字転換。業務効率化の成果が収益性改善に直結しました。
物流(AC Logistics):純損失は前年の₱77.3億から**₱63.1億へ縮小**。ラストマイル配送事業の終了と事業合理化施策が改善に寄与しました。
これらの事業は、銀行や不動産と比べれば規模は小さいものの、アヤラがヘルスケア、自動車、エレクトロニクス、物流といった分野へ戦略的に事業を多角化していることを示しており、今後はグループ全体の新たな成長ドライバーとしての役割が一層強まっています。
市場動向と投資家センチメント
アヤラ・コーポレーションの好調な第2四半期決算は投資家から好意的に受け止められました。決算発表後、株価は1.69%(₱10)上昇し、₱600を記録しました。この市場の前向きな反応は、特定の事業セクターが逆風に直面している状況下でも、アヤラの多角的な事業ポートフォリオが収益性を維持できるとの投資家の信頼を示しています。
2025年の見通し
アヤラ社長兼CEOのセサール・P・コンシン氏は、一部セグメントにおける改善の必要性を認めつつも、通期に対しては前向きな見通しを強調しました。
「通信およびエネルギー事業にはまだ追いつくべき課題がありますが、通期目標の達成は十分可能だと考えています。また、ポートフォリオ事業がより良い数字を示していることにも勇気づけられています。」
今後に向けて、アヤラは次の方針を掲げています:
銀行・不動産事業の成長をテコに、主要な利益の柱として強化する。
ヘルスケアおよび自動車分野を新規資本投入や戦略的パートナーシップで拡大・強化する。
エネルギーと通信分野の課題に対応し、事業運営の最適化とコスト構造の改善を進める。
多角化戦略の証明
アヤラ・コーポレーションの2025年第2四半期の業績は、同社が掲げる多角化ポートフォリオ戦略の強みを如実に示しています。銀行と不動産が安定した成長をもたらし、さらにヘルスケアや自動車といったポートフォリオ事業が存在感を高めることで、通信やエネルギーといったセクター固有の課題に対しても**高いレジリエンス(耐性)**を発揮しました。
エネルギーや通信事業が構造的な逆風に直面している一方で、アヤラは新興産業への拡大を継続しており、これは持続可能な長期的成長への道筋を築くものです。投資家にとって今回の決算は、同社が持つ柔軟な適応力、戦略的パートナーシップの構築力、そして安定性と革新性の両立への姿勢を改めて確認する機会となりました。
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